コラム

エクモについて

日本中に衝撃を与えた志村けんさんの突然の死去。新型コロナウイルス感染が確認されてからわずか6日でした。志村さんの治療に使われた『ECMO(エクモ)』という人工肺装置。重症化した肺炎患者の最終的な切り札として期待されています。

 

 

人工肺の中で血液に酸素を供給し、二酸化炭素を除去します。そうして、再び血液を体内に戻します。そうすることで、肺にかかる負担を軽くして機能の回復を図るのです。

2020年3月日本呼吸療法医学会・日本臨床工学技士会の調査によりますと、エクモ配置台数は全国で約1400台です。東京には196台があり、近畿では大阪103台、兵庫47台、京都40台、奈良21台、滋賀15台、和歌山12台ということです。

3月29日に重症患者を治療する施設・国立国際医療センターを視察した西村康稔経済再生担当相は「医療供給体制の確保が最優先課題のひとつ」として、エクモなどの増産をあげました。感染者が急激に増えている東京都では3月31日現在、196台のエクモが設置されているということですが、「早急に700台まで増やしたい」としています。

 

 

 

「(チューブの)青い部分が静脈です。首(の静脈)から血を抜いてきて、心臓の代わりになる『遠心ポンプ』を使って『人工肺』の方に血液を送ります。」

 

 

(Qエクモ運用の課題は?)
「使用には熟練したスタッフが必要なことのほかに、患者1人当たり医師4~5人、看護師10人以上、臨床工学技士2~3人の合わせて20人程度のスタッフが必要です。24時間体制で毎日データチェックなど絶えず管理する必要があるため、このくらいの人数が必要かなと思います。」

 

(Qデメリットは?)
「理論的には人工呼吸器よりも良いのですが、脳出血などの合併症の危険性もあります。1~2分間で全身の血液が入れ替わるほどのスピードで回し、血液をサラサラにするため、必要ないところから出血する可能性があるためです。」

 

(Q『“最後の”切り札』と言われる理由は?)
「患者の身体への負担が大きいことと、合併症が脳出血など重篤であることで、気安くは使えないということで“最後の”という表現が使われるのだと思います。ただ、適切な時期に使用開始することで、より有効になる可能性があります。肺が完全に病気で崩壊しきってからエクモを使っても治りません。最後の最後まで取っておくことは誤りではないかと思います。ただなんでもかんでも早く使えば良いというのも誤りだと思います。」

気圧の上げ過ぎは危険です。

 

酸素カプセルや酸素ルームを使用する場合、1.5気圧を超える気圧を使用することは、次のことから危険です。

1. 副作用が生じる危険性が高くなる

酸素毒性1)は1.5気圧以上で認められ、1.75気圧を超えると活性酸素2)が過剰に産生することが指摘されています (Wikipediaの「酸素カプセル」による報告より)。

1)酸素毒性とは、体内の過剰な酸素が有害な作用を及ぼしている状態のことです。これにより、筋肉のしびれやけいれん、呼吸困難などが生じます。酸素毒性の影響は、とくに脳と肺で大きいことが知られています。

2)活性酸素とは、酸素分子が反応性の高い化合物に変化したものの総称です。がんや生活習慣病の原因であり、老化を促進させます。

 

2. 負の生理反応が生じる

高い気圧に設定するほど、その気圧に達するまでに時間を必要とします。気圧の上昇中は交感神経1)の活動が積極的になり、血管が収縮を続けます (一方、気圧が低下しているときは副交感神経2)の活動が積極的になり、血管が拡張を続けます。血管拡張により血管の周囲の神経が圧迫されて、頭痛が生じる場合があります。これを天気痛といいます)。設定した気圧に達して気圧の上昇が止まると血管の収縮もなくなりますが、高い気圧に設定するほど長い時間にわたって気圧を上げていくので血管の収縮が続くことになり、血流の悪化を引き起こします。

1)交感神経は、副交感神経とともに自律神経系を構成しており、心と体の状態を活発にする神経です。運動をしているとき、緊張やストレスを感じたときに血糖や血圧を上昇させて、安静時心拍数を高めるのが交感神経です。

2)副交感神経は、交感神経と反対の働きをします。心と体の状態を落ち着かせる神経です。

 

3. 酸素カプセルや酸素ルームが破損した場合の危険性

酸素カプセルや酸素ルーム内の気圧が高いほど、破損時に生じる気圧の変化 (低下) は激しくなります。気圧が高いだけでなく、気圧の上昇や低下を急激に行うと体への悪影響 (たとえば鼓膜や肺の損傷など) が生じる危険性が高くなります。それを回避して、安全に (副作用なく) 効果1)を得るには、酸素カプセルや酸素ルーム内の気圧と酸素濃度を適切に維持することが必要になります。酸素カプセルや酸素ルーム内の気圧は1.25気圧から1.3気圧、酸素濃度は35%から50%にすることで安全に効果1)を得ることができます。

1)血液中に溶け込む溶存酸素を増やすことにより、健康や体力の維持・増進、抗加齢 (アンチエイジング)、美容に対する効果を得ることができます。赤血球内のヘモグロビンに結合する酸素を結合酸素といい、体内におけるすべての酸素の95%以上は結合酸素になります。体内の結合酸素は酸素カプセルや酸素ルームで増やすことができますが、健康な人の場合はヘモグロビンに結合している酸素は98%程度であり、酸素カプセルや酸素ルームを使用しても2%ほどしか増やすことができません。結合酸素は、高地順応 (酸素濃度の低い高地に長期間にわたり滞在して体をその環境に適応させる (ヘモグロビンを増やす) こと) により増やすことができます。

 

4.酸素カプセルや酸素ルーム内で火災が生じた場合の危険性

酸素カプセルや酸素ルームでは、100%の酸素 (純酸素) を使用することがないので、内部でろうそくやマッチに火を灯しても爆発することはありません。内部でろうそくを灯した場合、燃焼効率が良くなることでろうそくの長さは外部よりも約2.5倍の速さで短くなります (1.25気圧、40%酸素を使用した場合)。しかしながら、酸素カプセルや酸素ルーム内は密閉されており、すぐには減圧できません。気圧が高いほど減圧するための時間を要することになり、火災による被害を大きく受けることになります。

 

5.医療用装置と健康用装置の違い

2気圧以上、純酸素 (100%酸素) を使用した「高気圧酸素」の使用法が確立しています。治療を目的として使用されており、20種類ほどの治療 (医療行為) に使用されています (一酸化炭素中毒、熱傷や凍傷、脳梗塞、腸閉塞、突発性難聴などの治療に使用されます)。高気圧酸素治療は、高気圧と高濃度酸素を利用して体内の溶存酸素を最大限に増やすことを目的として使用されています。高気圧酸素治療では、鼓膜が破損したり、白内障になったり、活性酸素が過剰に発生するなどの副作用が生じる危険性が高くなること、さらに爆発の可能性 (静電気の発生によっても発火する恐れがあります。したがって、高気圧酸素治療の装置には、綿または木綿100%の下着を着用して滞在します。) が高いので、専門医の指導により行われます (医療機器を使用した医療行為になります)。一方、酸素カプセルや酸素ルームは、健康や体力の維持・増進、抗加齢 (アンチエイジング)、美容への効果などを目的として使用する健康機器になります1)。酸素カプセルや酸素ルームの気圧を高くして使用すれば、それだけ医療用の装置で得られる効果に近づき、酸素カプセルや酸素ルームの本来の目的から離れたものになります。気圧を上げればすべてのことに対して効果が得られるわけでなく、さらに気圧を上げればそれだけ大きな効果が得られることにはなりません。何を目的として酸素カプセルや酸素ルームを使用するのかに合わせて、適切な気圧と酸素濃度を使用する必要があります。高い気圧ほど医療を目的とした使用になり、健康機器としての効果が大きくなると考えるのは危険です。

1)酸素カプセルや酸素ルームの効果は、「石原昭彦. 軽度高気圧酸素の仕組みと効果. ファルマシア (日本薬学会), 53: 241-244, 2017」と「Ishihara et al., Mild hyperbaric oxygen: mechanisms and effects. Journal of Physiological Sciences, 69: 573-580, 2019」に総説としてまとめられています。

 

6.まとめ

1.5気圧を超える気圧を使用した酸素カプセルや酸素ルームは、1) 副作用が大きくなる、2) 生理反応として悪い影響をもたらす、3) 破損や火災 (おもに火器の使用による) の危険性が高く、破損や火災が生じた場合の被害は甚大なものになる、4) 医療装置としての作用に近づき、酸素カプセルや酸素ルームを使用する本来の目的とは異なる方向 (治療行為) に近づくなどの問題があります。安全を最優先して健康機器として酸素カプセルや酸素ルームを使用するためには、適切な気圧 (1.25気圧から1.3気圧) と酸素濃度 (35%から50%) を維

 

 

京都大学で5月12日に健康気圧マスター養成講座が開催されます。

天気痛ドクターも講演いたします。

今回の講座では、天気痛研究の第一人者
中部大学 生命健康科学部 教授 愛知医科大学 医学部 客員教授
(医師、医学博士)佐藤純先生も、講演をいたします。
時間は、11:10~12:10 の60分間になります。

天気痛・気象病や、身体機能と気圧の関係など興味深い内容となっておりますので、
是非ご参加ください。

民間の使用する1.5 気圧以上加圧した酸素ルームは危険です。

スキューバーダイビング後に起こる「窒素中毒」「窒素酔い」ってご存知ですか?
「窒素中毒」「窒素酔い」とは、ダイビング中に脳や体内に溶け込んだ空気タンク内の窒素が過剰に残り、ダイビング後に地上で膨張し、激痛、めまい、だるさ、物の見え方の異常、皮膚のしびれなどの症状が出ます。

 

例えば、コーラなどの炭酸飲料のボトルの口を開くと急激に大量の泡が発生します。
これは高圧下で溶け込んだ大量の炭酸ガスが、ボトルの口が開いたことでボトル内の
圧力が急激に下がることにより、急速に開放されて出てくることによります。

これとほぼ同じ現象が1.5 気圧以上に加圧した酸素ルームでも起こるのです。

あの急速な現象が人の体でも起こると考えると、
とても危険だということがなんとなく想像つくでしょうか。
1.5 気圧以上に加圧された酸素ルームに入ることによって血液に窒素が溶け込んだ状態から
退室のために減圧をすると圧力によって血中に溶け込んでいた窒素が開放されます。
まさに、血液は口を開けられた炭酸水状態になるのです。

 

こうなると、大変。
血中に気泡が生じその場所で組織障害が起きてしまいます。
末端の毛細血管が塞がった程度ならば軽い痺れくらいで済みますが、
気泡が生じる場所によっては知覚障害や運動障害が起き、
場合によっては長期的な治療が必要なほど大変危険な状態になってしまいます。

 

1.5 気圧以上の酸素ルームを使用する場合は、医師の指導監督のもと使用するようにしましょう。